KEYTECH VISON Vol.2

ものづくりは人づくりから
材料、構造から建築デザインまで習熟し提案する力を養う働き方

華奢なスーツ姿からは察しがたいが、開発部の成田敏基さんは大学時代、トライアスリートだった。「自転車で高尾山まで行ってから大学に行ったりね」とこともなげに話す。その持ち前の持久力は、研究者としての生活でも発揮されているはずだ。大学、前職の住宅メーカー研究所で木造の耐震構造の研究を重ね、現職ではLVLという素材の研究に没入する。
1年目から国交省、林野庁などからLVLの開発資金を託された。’公共建築物木材利用促進法’が施行され、外部の研究機関と連携してLVLの構造、防火関係の開発に勤しむ日々だったという。そして現在は構造分野の開発を担当。誰よりも早く正確に新製品の性質を把握する立場にいる。「例えば、薄くて長い材料を作れるLVLの特徴を生かしたストレストスキンパネルは、最大で12mの長スパンを飛ばせる新製品です。建築家には、これを使うメリットをデザインにまで踏み込んで説明、説得する必要がある。’提案型の営業’の時代ですね」。その口調には、挑む山が高くなることを楽しむ風情さえある。
大学時代は、森は見えず、木にしか注目していなかったという。今は、鉄骨造もRC造もある中での’木造’の立ち位置を俯瞰的に捉えることを目標とする。「木しか使わない木造に固執せず、混構造として活用することで木という素材の良さを発揮したい」。目標を確実に実現する強靭な知性に、LVLの明日を見る。

株式会社キーテック 開発部開発課
成田 敏基 TOSHIKI NARITA

1975年神奈川県生まれ。東京大学農学生命科学研究科修了後、住宅メーカー研究所勤務を経て2010年株式会社キーテック入社。現在、開発部勤務。

木と機をにらみ原木を仕入れる

貯木場の水に浮かぶのは、需要と供給のバランスを睨んで購入された丸太の数々。栗原和久さんは、たった2人で切り盛りする購買部で8年間、丸太と向き合ってきた。「いや、自分はまだまだ目利きとは言えない(笑)。上司や現場の経験に頼りながら見る目を養い、これまでの歴史の上に新たな判断材料を継ぎ足す道半ばにいるんです」。
購買の仕事は原木、つまり伐り時や使い時がある生もの相手である。加えて木材価格も、為替や需給動向で変動する生ものと言える。種々のタイミングを捉え、より正確な判断を下すために必要なのは、情報収集力だと確信する。「社内での情報収集はもちろんのこと、取引先の商社からも ‘今丸太が減っているから、前もって買っておいた方がいい’など一歩先の事情が聴けるのは、個人的な信頼関係があってこそ。人間関係は、品質に反映します」。国産材の需要の多い昨今は、森林組合や伐採会社、供給元の山へしばしば足を運び、また彼らを工場に招き案内する。すると ‘林業者と共に建築をつくっている’という実感が生まれてくる。
丸太には好き嫌いがあるけれど、人間に好き嫌いはなし、と笑いながら、海際に積まれた丸太を見定めるように叩く栗原さん。今は仕事が趣味という。八戸出身、大学では森林資源科学科で学んだ身にとって、ここでの仕事はまさに適地適職である。

株式会社キーテック 購買部
栗原 和久 KAZUHISA KURIHARA

1978年青森県生まれ。静岡大学大学院農学研究科森林資源科学専攻木質科学講座を修了後、2003年キーテック入社。工場勤務、品質管理課を経て、2005年より資材課(のちに購買部)勤務。

刻一刻と状況の移ろう現場だから揺るぎない信頼関係を足場にする
LVLの魅力を知ってほしい
10年間の現場経験を生かして全方向からLVLを盛り立てる

いい顔ばかりはできない。立場立場の言い分も分かる。そんな中で最良の取引を成立させるのが営業の極意である。この部署にきて2年目、「どちらかというと、研究の方が好きなんですが」と頭を掻く。大学では製材の乾燥を研究し、入社後の配属は品質管理課。3人しかいない部署で、LVLの命とも言える接着剤を変更するという大仕事も経験した。その後はLVL工場に5年間、独身寮から通い詰めた。’工場のなんでも屋’として動ける素養を身につけたのはこの時期である。
そして突如、営業部へ引き抜かれた。工場からの転属は2人目という珍しい人事だった。「自分の成績が悪いと、工場出身の人間に迷惑をかけるのではとプレッシャーを感じます(笑)」。会社の意向、ものづくりの現場の意向、そのどちらも熟知する中、それぞれの立場を慮りながらLVLを最適な方法でユーザーに届ける。研究者と現場の視点を併せ持つ言葉は、相手の心に届く強さを持つ。
「ふんばりが効くのは、大学時代にユニホックで全国大会3位の経験があるから」と、吉田さん。今後はセクションや業種の枠組みを超える働きがしたいと語る笑顔の中に、健やかな野心が光る。さらに広いグラウンドで本領を発揮する日は遠くない。

株式会社キーテック LVL営業課
吉田 智則 TOMONORI YOSHIDA

1977年千葉県生まれ。静岡大学農学部森林資源科学科卒業後、2002年株式会社キーテック入社。品質管理課、LVL工場を経て、2012年より本社営業部勤務。